僕のことなんか何にも知らないくせに ベル 寒さも酷くなってじゅんこが冬眠した日のことだった。 じゅんこのいない部屋に帰るのが、何となくためらわれ遠回りしていたら、珍しく声をかけられた。 「孫兵!」 「神崎か。何しているんだこんなところで」 「うん、食堂に飯を食べに行こうと向かっていたところだ」 「逆方向じゃないか?」 「ん?そうか?おかしいな。こっちだと思ったんだが」 おかしいのはお前の方向感覚だ。 じゃあこっちだな?と神崎はまた食堂とは違う方向に踵を返す。 そしていつものように走り出すのかと思うと、3歩ほどで振り返られた。 「孫兵」 「どうした?方向が違うって気づいたか?」 「ん?こっちでもないのか?って、じゃなくて。あのさ」 「?食堂ならあっちだぞ?」 「だから、そうじゃなくて!その、元気か?」 「別に、風邪とか引いてないんだけど」 「いや、そういう意味でもなくて。その・・・なんか元気なさそうに見えたから」 「・・・・」 「いや、私の気のせいならそれでいいんだ。じゃぁな!」 そういうと神崎はやっぱり違うほうへ走り出した。 「神崎!待て」 僕のことなんか、何にも知らないくせに。神崎の一言はあたたかかった。 「僕もまだ食べていないんだ。一緒に行こう」 神崎は少し驚いた後、にっと笑って立ち止まった。 夕刻を告げる鐘が一つなって、僕らは手を繋いだまま並んで走り出した。 ソングシリーズ第2弾BUMP OF CHICKEN「ベル」孫と左門。 この二人はお互いのこと何も分かってなくても感覚で仲良くなっていそうだと思う。 戻る
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