「あー、佐藤(仮)いーもん持ってんじゃん」
「ん、あぁ今日部活(写真部)で使うんだ」
「へー・・・」
そう言って目をキラッキラさせている田島(クラスで一番小さくて、元気なヤツ)は、オレの愛しい新カメラ(割と高性能)を今にも触らせてと言い出しそうで。
「何なら、試し取りしてやろうか?」
下手に触らせて壊されちゃたまらない、と話を誤魔化したオレはちょっと酷いやつかもしれない。
記念写真
「マジで?いいの?」
そんなオレの、気持ちを知ってか知らずか、すっげえ嬉しそうに田島がオレを見上げる。
うん、頼むから写真くらいで嬉しそうな目で見んな。小学生みたいなキラッキラした目でオレを見んな。心が痛くなる。
話を逸らしたオレの心の汚れとか浮き彫りになるから。
「んじゃ、他のヤツも一緒にとってくれよ」
「おぉ、別に何人でもいいぜ」
そういうと、田島はやったぁと言いながらうちのクラスの野球部(あれ?浜田は野球部じゃなくて応援団だっけ?うちのクラスのムードメーカーででかいヤツ)を大声で呼んでクラスの注目を浴び、泉(野球部で、小さいけど性格男前なヤツ)に「んなでかい声で騒ぐな」って叱られた。
なんていうか、入学数ヶ月ですっかり田島の躾役が板についてきたよなぁ。泉って。
そして、「どうしたー、田島ー」と浜田がのんびりと、三橋(野球部の中でオレと目が合わないヤツ。挙動不審。田島から聞いた話では嫌われているわけではないらしい)がびくっ!てちょっとおどおどしながらよって来た。
「佐藤(仮)が写真取ってくれるってー。一緒にとろうぜー」
「え?何でいきなり写真?」
「あー・・・何となくノリで新しいカメラの試し取り?」
田島に下手に触られて壊されたくなかったんだよ、とは流石に言えないので目を逸らしつつそういうと、とりあえず納得してくれたらしく突っ込みは来なかった。
多分、泉と浜田はオレの本音を察してくれたんだろうな。ドンマイとでもいいたそうな顔をしてる。
いや、別にこのくらい全然構わないんだけどな?
ただ、田島の素直さに自分の心の汚れが浮き彫りになってへこみそうになっただけだし。
「まぁ、そういうわけだから、ちょっとそこに並んでくれ撮るから」
オッケー、と言うが早いか田島たちは嬉しそうにポーズを取る。つっても定番のピースサイン程度だけど。
まぁ、ベタで逆に良いよな。こういうの。しっかし
「三橋ー、表情硬いぞー。困った顔で写真に残っちゃうぞー」
写真1枚でなんで三橋はこんなに緊張してるんでしょうか。田島さん。
こんなに、あがり症で試合とか大丈夫なのかコイツ。確か投手なんだよな?あがって暴投とかしないのか?何か心配になるんだけど。
それとも、やっぱ試合になると違うんかな。いや今、全然関係ないけど。
っていうか田島、三橋に近づいて何す・・・
「三橋ー、三橋ーばんざーい」
「ば、ばんざー・・・」
い、と続くだろう三橋の言葉は音に出る前に消えた。
万歳をしたことによって無防備になった三橋の脇を、田島がくすぐりだして声にならなかったからだ。
「何してんだ田島ー!!」
「え?だって、笑った顔の方が良いじゃん」
そりゃ折角写真に撮るんだし笑った顔のが良いだろうけどさぁ。それは反則だろ。笑った顔って言うか、強制的に笑わせてんじゃん。有無を言わさず。
あ、でも三橋の緊張はほぐれたな。だから泉も浜田も何も言わなかったんかな。・・・慣れてんなぁ。
「あー、んじゃ三橋の緊張もなくなったみたいだし、今度こそ撮るぞー。浜田ー、もっと泉のほう寄って・・・泉ー、んな嫌そうな顔すんなー。田島と三橋もこっち見てー」
俺はカメラを向け、ピントを合わせるのに2、3歩後ずさる。
「はい、笑って笑ってー・・・」
おー、三橋も今度はいい顔して笑ってンじゃん。
オレはシャッターにボタンに力を入れた。
おまけ
「ほい、コレ」
「う、え?」
「この間の写真。現像したから。コレ三橋の分」
そういって、差し出した写真を三橋は受け取っていいのか悪いのか悩んでるのか、中々手を出さない。
・・・やっぱりオレ、嫌われてんじゃねえかな。
ちょっぴり、落ち込みそうになりつつ三橋に写真を渡してさっさと行こうとした途端、いきなり後ろから田島が体当たりしてきた。
「なーにしてんだよ、佐藤(仮)」
「田島ー、お前いきなり人に体当たりすんのやめ」
「あー、この間の写真じゃんもう現像したのかー。オレの分はー」
うわぁ、超聞いてねぇ。知ってたけど。そういうやつだって知ってたけどさぁ
「ほい、お前の分」
「サンキュー、んじゃこっちは三橋の分?」
「おー」
「だってさ、三橋。佐藤コレくれるって」
言うが早いか、田島は三橋の分も写真を手に取るとほいっと俺の変わりに手渡した。
・・・田島相手なら、すんなり手に取るのか。何か、こう微妙にショックだよ。オレは。(一応クラスメイトなのにさぁ)別に良いけどさ。
「んじゃ、ついでにコレ泉と浜田にもついでに渡しておいてな」
「おー」
オレは田島に写真を預けて、さっさと席につくことにした。
だけど、そのすれ違いざま。
「さ、佐藤(仮)、君、あ・・・りが・・・・とう」
か細く、三橋がそういったのが聞こえて、何となく嬉しくて。田島や泉が三橋を構う理由がわかる気がした。
今度また、野球部の奴らと撮ってやろうと思った。
「この写真、結構開いてるスペースあんな。三橋ー、お互いちょっとメッセージ入れようぜ」
「う、ん。メッセージ!」
写真一枚であれだけ、喜ばれるなんて早々ないし、な。(お子様コンビめ)
オリキャラ視点で九組の話。
田島や泉がいなかったら三橋って普通にとっつきにくい感じだろうなー、と思いクラスメイトから見た野球部の話を書いてみた。
と、いっても判明しているクラスメイトが少なすぎてわからないのでオリキャラですみません。
どことなく、オリキャラ×三橋っぽくてすみません。田島の出番が多いのはヒイキです(言い切った)
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