ピカレスク様より拝借しました坂銀十御題。

1 差し出された掌。
2 彼の髪。
3 茜色のコート。
4 銀。
5 流れ星。
6 サングラス。
7 いってらっしゃい。
8 三日月。
9 生クリーム。
10 笑。

 

 

 

 


1 差し出された掌。(坂本→銀)
例えば、その手を振り払われるとしても。
掴んだ手が掴んだそばから急速に冷えていくものだったとしても。
そのことで自分が傷つくことになたとしても。
そいつが困っているのならば、誰にでも差し出してしまうやつだと知っている。
誰よりも、必死に手を伸ばしてしまうやつだということを知っている。
だから、せめて。
おんしがわしに手を伸ばしたときは、せめて。
何があっても絶対にその手を掴むことを、わしは誓おう。
だからどうか、わしがこの手を差し出すときも掴むことをためらうな。

 

 

 

 

2 彼の髪。 (坂←銀)
疎ましいと人は言う。
異形の色だと人は言う。
だから、こんな髪なんて大嫌いだった。それなのに。
「おんしの髪はしょうまっこときれいじゃのー。さしずめ月に照らされた雪のようじゃき、羨ましい限りちや」
そう言ってお前はなんでもないことのように笑う。
いたって真剣に。ガキが宝物を見つけたような馬鹿笑いで。
だから言えなかった。同じ天然パーマならお前の色のがよっぽど羨ましいなんて。
お前は真剣に褒めているのに、言えるわけねぇじゃねえか。絶対。

 

 

 

 


3 茜色のコート。 (坂本←銀)
こいつは馬鹿でどうしようもない男だが、唯一褒める点があるとすれば自分のことを良くわかっている点だろう。
「に、してもてめえ暫く見ねえ間に随分派手な服を着るようになったな。何だ?自己主張か?孔雀かなんかですかお前はコノヤロー」
「あっはっは、そうか?ほがーに派手な格好ばしちゅうかぇ?」
「派手だろ、普通に。でっかい黒もじゃが赤だぞ?」
「けんど、似合うやお?」
「まぁな」
夕暮れの太陽のような外套は、あの頃見飽きた赤と違って太陽のようなこいつに良く似合う。

 

 

 

 


4 銀。 (坂+銀)
「おう、金時ー。遊びんきたぜよー」
「帰れ。此処には金時なんて人いーまーせーんー。つうか、何度も言ってるけど『金』じゃなくて『銀』だ『銀』。金だったらこれ、とっくにこの漫画打ち切りになっちまうだろがぁぁぁ!!」
「あっはっは、そうだったかのー?まぁ、そがなことより土産ば買ってきたで、今夜は鍋ばせんか?」
「きいてねーな、コノヤロー。つーか、肉と糖分持ってきてんだろーな?これで白菜と春菊だけっつったら、期待させた分本気殴りすっからな」
「あっはっは。そがぁな心配ばせんでも肉も甘いもんもたーんともってきたでぇ、たんと食えちや。ちゅうか、おんしまた碌なもん食ってないがか?」
「うっせーな、金がねえんだよ。金が。あったらパフェの上にケーキ乗せて食ってる」
「あっはっは、あいかわらずじゃのー。おんし、名前ば『金時』ゆうに、しょうまっこと金と縁がないのー」
「るせぇ、ほっとけぇぇぇ!つーか、やっぱり人の話聞いてねえじゃねえか!『金』じゃなくて『銀』だ!『銀』!!」

 

 

 

 

5 流れ星。 (攘夷時代。別れのとき坂→銀)
自分の都合で、信念で去っていく身で祈る。
勝手だということはわかっている。
怒鳴られ、罵声を浴びせられても仕方がないとわかっている。
だが、それでも祈らずにはいられない。
「これ以上誰も死なんでくれろー」
そのために自分は宇宙(そら)に行くのだから。

 

 

 

 

6 サングラス。(坂本←銀)
わかってるよ。
どれだけ離れていたって色ガラス越しの世界で俺と同じ所を見ていることくらい。
俺にはちゃんとわかってる。

 

 

 

 

7 いってらっしゃい。 (攘夷時代坂本←銀)
この戦から遠ざかるお前の背に投げつける。
大丈夫。ちゃんと待っててやるとも。何時、お前が帰ってきてもいいように。
俺は此処で待っててやるから。
振り返るな、前を見ろ。
いつか帰ってくるその日まで、俺はくたばりやしないから。心配しないで行って来い。

 

 

 

 


8 三日月。 (坂+銀。基本のノリ)
「おんしの剣のように綺麗な月じゃのう。よし、それほんなら銀時。いっちょ月見酒でもしようやか」
「ざけんな。てめー、単に飲みたいだけだろ」
「わしの奢りちや」
「よし、風流をたしなむとしようぜ」

 

 

 

 


9 生クリーム。 (坂本→銀)
「甘いもんってのは幸せの味なんだよ。卒業式の紅白饅頭然り、誕生日のケーキ然り、結婚式のウエディングケーキ然り、東西南北古来から祝い事に甘いもんは欠かせねえだろ?」
「確かに今んおんしばみちょると説得力があるのー」
生クリームたっぷりのケーキを頬張る彼の顔は、本当に幸せそうな顔で。
あの頃一緒にいたやつらの中でこんな顔を堂々と見られるのは、今はもう自分だけと言うことが嬉しさ半分、淋しさ半分で少し胸が痛んだ。

 

 

 

 


10 笑。 (坂本→銀)
いつだって胸を張って馬鹿笑いをしてやろう。
おんしが、そんな風にしか笑えないと言うのなら。
わしゃぁ、いくらだって馬鹿笑いをしてやろう。
おんしが、呆れかえって声を上げて笑い出すまで。きっと。

 

 



戻る