1, こっちの傘は蝸牛にでも(金喜)
雨が降っていた。
冷たい、冷たい雨だった。
雨にまぎれて君が泣いていた。
「・・・金吾?」
「喜三太・・・?」
「どうしたの?何で泣いているの?どっか痛いの?保健室行く?」
「平気だよ、雨に濡れただけだから」
「本当に?」
「うん」
「そっか。でもそんなに濡れてちゃ風邪引いちゃうよ、傘は?」
「んー、蝸牛さんにあげた」
赤い目をして君は笑った。
分かりやすすぎるすぎる嘘に、聞いて欲しくないことなんだろうと思って僕はそれ以上聴かないことにした。
「じゃあ、僕の傘に入りなよ」
「僕もうびしょ濡れだよ?」
「うん、まあそうだけどずっと濡れているよりいいじゃないか。ほら、一緒に帰ろう?」
「・・・うん」
その代わりに、ぎゅっと冷たくなっていた君の手を繋いだ。
君の手は冷たくて僕の手に比べてごつごつしていた。
「冷たいなぁ。金吾、もうむやみに蝸牛さんに傘をあげたりしないでね」
「・・・うん」
きっと、この手を離さなきゃいけないようにいつか終わる約束だけど、この手を繋いでいられる間は君の手が冷たくならないように。
一人でずぶ濡れになったりしないように、僕は祈った。
泣き虫金吾とちょっと大人っぽい喜三太
喜三太は下手に慰めることなんかできないけど、ずっと一緒にいてくれるイメージ
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2, 揺れた風鈴、通り抜けた風
(虎団)
「あっついなぁ」
「そうだね」
「少しは気がまぎれるかと思って風鈴つけたのになー」
「風がないから意味なかったね」
「あー、もう少しは鳴れよー」
「団蔵、無茶言うなよ」
「そりゃ、そうだけどさー・・・あーくそ、こうしてやる」
りーん、りーん、りーん、りーん
「団蔵、猫の子でもあるまいし風鈴にじゃれないでよ」
「だって鳴らないじゃん」
「あー、もうしょうがないなあ30数えたら交代だからな」
「うー、わかったー」
パタパタパタ りーんりーん
扇子で扇いだ人工の風に風鈴が鳴った。
は組と団蔵シリーズ第6段虎若と団蔵。
若旦那と同室なんて美味しいよなぁ、虎若。
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3, 紅葉よりも紅く、貴方に染まる
(乱団)
本当はね、あんまり好きじゃなかったんだよ。こんな髪。
赤茶けて細くて切れやすくって、纏まってもくれないから髷すら結えないこんな髪、好きだ何て思えなかったんだ。でも、ね?
「乱太郎の髪って綺麗だな」
「そう?赤茶けて細くて切れやすいし、全然纏まらなくって不便だよ?」
「んー、でもさ、ほら見てみろよ」
そういって彼が指差したのは、暮れ行く真っ赤な夕暮れの空。
「同じ色してるぜ。すごい綺麗だろ?」
当たり前みたいに言われた言葉が嬉しかったから、昨日よりずっと好きになれると思ったんだ。
は組と団蔵シリーズ第7段乱太郎と団蔵。
やっぱ一回くらいは乱太郎の髪の毛ネタはやっておきたかったんだ。
。
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4, 雪が溶ける前に
(は組)
「雪だるま、作りたかったなぁ」
「僕も雪合戦とかしたかったよ」
「まぁ、しょうがないじゃない」
「でもさ、結構重労働だよね。これ」
「え、金吾や団蔵は委員会とかでこういうの慣れているんじゃないの?」
「・・・まぁ、そうだけど」
「好きで慣れてるわけじゃないよ」
「それにしても、本当大変だねこれ」
「これを毎年きり丸は一人でやってたのか」
「凄いね。尊敬しちゃうかも」
「でも、これからは僕らの毎年の行事になるんじゃない?」
「言えてる言えてる」
「まぁ、皆でこういうことするのも楽しいからいいじゃない」
「そうだねー」
「おーい、洞窟一杯になったからもういいぜー・・・何笑ってるんだ?」
「あ、きり丸もういいの?」
「いや、あともう一箇所いいところがあるからそっちも手伝ってくれよ」
「えー、まだあるの?もういいじゃない」
「駄目駄目。せっかく材料費ただのなんだから今のうちにしっかり用意しておかないと」
「もう、仕方ないなぁ」
「そのかわり、夏がきたら僕らにもちゃんと分けてよ?」
「分かってる分かってるって」
そうして11人がこの日集めた雪でカキ氷売りのバイトの手伝いもすることになるのはちょっと未来の話。
は組っ子話。
このお題を見たときそういや、昔のアニメ忍たまで夏用に雪を集める話があったなぁと思い出したので。
昔の人のそういう素朴な知恵ってすごいよなぁと思う。
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5, 桜越しの・口付け (綾三木)
ぽかぽかと暖かい日だった。
満開の桜の木の下で三木が寝ていた。
わあ、今日は運がいいなぁと思いながら気配を消して寝顔を見ようと近づいたら、三木の艶やかで形のいい唇に桜の花びらがついていることに気がついた。
僕は少し考えて、そっととってあげることにした。
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・んむ・・・はぁ・・・ってこらぁ!」
「あれ?三木起きちゃった?」「こんなことされれば誰だって起きるわ!人が気持ちよく寝てたのを何で邪魔するんだお前は!!」
「やだなあ、三木の唇に桜の花びらがついてたからとってあげようとしただけだよ?」
「口で取るなよ!手で取れよ!」
「好きな子に隙ができているのにちょっかい出さないなんて男の恥じゃないか」
「誰が通るとも分からない公衆で据え膳を食うな!というか、舌まで入れるのはやりすぎだろ!?」
「だって、桜越しの口付けなんて雰囲気はいいけど、どうせなら三木を堪能したいし。ああ、そういえばね三木知ってる?」
「何だよ!話を逸らすな!!」
「南蛮では眠っていたお姫様が接吻によって目覚めた場合、その相手のところに嫁ぐのがしきたりらしいよ?」
「だから逸らすなって・・・・・・え?」
「目を覚ました、よね?」
「・・・・・・・っじゃ、じゃあなっ!綾部僕は百合子の手入れをしなきゃいけないんだった!」
「あはは、何で目をあわさないで逃げようとしてるのかな?三木」
「何でって、そりゃあお前の目が限りなく本気
だからに決まってるだろ!!」
その後、桜の下で壮絶な追いかけっこが目撃されたのは言うまでもない。
ついに拍手に進出しちゃったよ綾三木。
でもこの御題で表に置くには団蔵じゃまずいかなと。ほら、まだ十歳だから。若旦那。
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