※この小説は三年生になった庄左ヱ門と団蔵の話です。
気持ち的には庄団ですが、団蔵が女の子と付き合ってたり別れたりしてます。
そして二人ともにいろんな意味で駄目な奴になってます。(何で若旦那最愛なのにそういう扱いすんだよ自分)
そういうのが許せる人のみスクロールしてください。

















「結局のところ団蔵は何処までいっても加藤村の若旦那なんだよ」






卑怯者の告白





忍術学園に入って三年目、ちょうど三回目の夏休みが終わって俺は四人目の付き合っている女の子に振られた。
まぁ、相手から告白されて割と好みだったからためしに付き合った子だし、付き合ってた時間も短かったからそんなに傷ついてはいない。
傷ついてはいないと思う。
でも、前回も前々回もそのまた前もそういえば短期間で別れたんだっけなということを思い出して、そっちの方に落ち込んでいた。
とりあえず、人気のない教室でため息を吐いちゃうくらいには。

「何、団蔵ってばまた女の子と別たの?」

すると、人気がなかったにもかかわらず俺の心を読んだような返事が返ってきた。

「別にそんなこと言ってないだろ」
「じゃあ違った?」
「・・・違わないけどさ」

鋭いというよりは目ざとい学級委員の庄左ヱ門だった。
彼はにっこりと相変わらず一見人好きのする、しかしそのくせ自分の腹のうちを見せない笑みを浮かべるとすとんと俺の隣に座り込んだ。
無言の目配せと表情、経験から察するにどうやら腰をすえて俺の話を聞くつもりらしい。まぁ、俺がそれなりに滅入ってるので話を聞いてくれるの半分、面白そうなので聞かせろという好奇心が半分といったところだろう。
それでも隠しておいたところでこの聡い友人のことだ、知りたくなればたいした時間も手間もかけずに情報を手に入れてしまうのだろう。
それこそ俺としてはあんまり知られたくないところまで正確に。
と、なれば観念して言えるところまで話してしまうに限る。
彼の場合その貪欲な好奇心を満たせれば、よほどのことがない限りこちらが線を引いたところには踏み込んでこないことや口が堅いことは俺だって入学してからの三年間でしっかり把握している。
少なくともどこかの作法委員や図書委員・・・いや、まぁうちの組のだけど・・・のようにむやみにからかってきたりすることもないはずだ。
俺はため息を一つ吐いて彼の方に向き直った。

「俺ってさぁ、そんなに情が薄いかなぁ」
「そんなこと言われて振られた?」

・・・まぁ、線を引く前だと結構ずけずけと普通は言いづらいことも言ってくるのだけれど。

「直球でそういうこと聞くような奴よりはよっぽど情に厚いって思ってたんだけどね」
「ふうん、大方君のことだから家の手伝いでその子に夏休み中連絡の一つも全くしないでいたんじゃない?それで自分と家の手伝いとどっちが大事なのって迫られたってとこかな?」
「庄左ヱ門、お前どこかで隠れてみてた?」
「いや、あくまで推測だよ」

いやいやいや、寸分の狂いもないぞ?その推測。
俺は疑わしいなぁという意味をこめてじいっと庄左ヱ門を睨み付けた。
しかし庄左ヱ門はまるで気にした様子もなく涼しい顔をしている。

「大体見ていたのなら今更団蔵に聞くことなんかないだろ?時間の無駄、その分本でも読みに行くよ」

ホント、いい性格だよお前って奴は。

「そうかよ、冷たい奴ー。普通、友達が振られたとか言ったら慰めようとするもんだろ」
「嫌だよ、そういうのは乱太郎とか三治朗向きだろ。大体、団蔵の場合は自業自得じゃないか」
「んなこと言ったって、村の仕事しているときに他の事までそんなに手が回らないんだよ」

柄にもなく文とか送ったって字が汚いってからかわれるだけだし。と、答えると庄左ヱ門は露骨にため息を吐く。

「何だよ、何でため息吐くんだよ」
「いやぁ、団蔵のことだからそういうことを正直に言っちゃったんだろうなぁって、ちょっと女の子に同情をね」
「言ったけど・・・何かまずいか?」

聞き返せば今度は大仰に首をすくめられてしまった。何なんだよいったい。言いたいことがあるなら言えばいいじゃないかよ、回りくどくて腹立つなぁ。
俺は自分でもわかるくらい不満げなふくれっつらをしてそっぽを向く。

「あーあーあー、むくれるなよ。子供じゃないんだから」
「子供ですみませんね。庄左ヱ門が回りくどいのが悪いんだよ」
「はいはい。悪かったよちゃんと説明するからむくれるなって。男前が台無し」
「男に棒読みでそんなこといわれて喜ぶ奴はいないと思うぞ、俺は。それはそうと何だよ、理由って」

つっけんどんにそう返すと庄左ヱ門はしょうがないなあとでもいいたげに苦笑しつつ口を開く。
まるで小さい子へ言い聞かせるお兄さんみたいだ。いや、子供みたいな反応をしてる俺のせいだからだけど。
それにしたってまるっきりガキ扱いされるのは気分が悪い。でも、コイツの言うことは何時も概ね正しいから、悔しいけど文句はつけずに向き直る。

「うん、僕が思うにさ。団蔵はそれこそ村のため・・・いや組織のためなら自分の優先順位は切り捨てられる人間なんだよねってこと」
「俺、別にそんな自己犠牲精神みたいなの持っているつもりないんだけど」
「自覚してないだけだよ。例えば君、委員会後の休日に恋人と出かける約束をしていたとして、当日までに後輩が帳簿の計算終わらなかったとしたらどうする?」
「そりゃ、わけを話して委員会の方に行くよ」
「うん、じゃあそれはどうして?団蔵としては委員会より恋人の方が優先順位高いの?」
「そういうわけじゃないけど、そんな個人的な理由で委員会に迷惑かけられないだろ」
「うん、正論だね。でもこの選択の事象だけ見るなら団蔵は自分の優先順位よりも委員会って言う組織としての優先順位をとったといえる。コレはわかる?」
「何となくは。でも、そんなの普通皆するようなことだろ?」
「そうだね、皆少なからずとっている行動だよ。でも、団蔵の場合はね、それが常になんだよね。僕から見てもたまにいきすぎだって思うくらいに」
「・・・そうかな?」
「そうだよ。そもそも君、大事なものはいっぱい持っているくせにその格付けは全くしないだろ?したところで、君の場合自分にとっての優先事項よりも組織にとっての優先事項を選択するしね。その上それを隠しもしない。だから女の子たちはそれが気に食わないんじゃないかな。自分がないがしろにされているみたいで」
「別に、ないがしろになんかしてないよ」
「うん、でもやっぱり普段から村とか委員会とかは組を優先に動くよね」
「そんなつもりはないよ。皆に迷惑かけるのは嫌だなぁとは思ってるけど、別に特別なことして無いだろ?というか、集団生活してるんだから」
個人的な理由で皆に迷惑かけるわけにはいかないじゃないか。と言ってみると、庄左ヱ門はまたまた露骨にため息を吐いた。
・・・なんで此処まで呆れられなきゃいけないんだ?俺。

「それにしたってり仮にも恋人なんだから優先して欲しいっていうのが人情だし、正当な言い分とはいえ少しは気にしているところを示して欲しかったんじゃない?まぁ僕の憶測だけど」
「・・・それなら、はっきり淋しいって言ってくれればいいじゃないか」
「乙女心は複雑なんだから察しろよってことじゃない?でもまぁ、そうはいっても団蔵の場合は結構仕方ないって僕は思うんだけどね」
「悪かったな、鈍感で」
「いや、そうじゃなくて君は加藤村の若旦那だから仕方ないよってことだよ」
・・・それが何で仕方ないに繋がるんだろうか。俺は大きく首をかしげた。
すると庄左ヱ門は先生みたいに笑って説明を始めた。
「団蔵はさ、上に立つものとして育てられているから、自分よりも組織としての有益を考えるように思考が染み付いているんだよ」
「そんなつもり全くないんだけど」
「自分のことだから実感してないだけだよ。団蔵はさ、言うならば頭の天辺から足の先まできっちりと『加藤村の若旦那』なんだよ。当然といえば当然だよね。君は生まれてからずっと『頭領の息子』として育てられてきたんだから」
「・・・まぁ、それはそうだけど」
「それに君、先天的な上に立つ器量も持ってるし」
「それは庄左ヱ門に言われても説得力ないよ。は組の委員長はお前だろ」
「うん、でもは組が纏まっているのは君の支えが大きいよ。何せ僕と喧嘩しては組を学級崩壊寸前にまでしたのは君くらいだし」 「一年のときの話だろ。しかもそれのどこで俺が人の上に立つ器量があるってことになるんだよ」
「少なくとも君が人に影響を与えている証拠だろ。僕に言わせれば団蔵はいい意味でも悪い意味でも組織の中心になってしまう性分なんだよ。当然の結果だね。天性の素質だけじゃなくてそれを育む土台まで持ち合わせて育ってきたんだから、そうならない理由の方が見つからない」
「・・・それだけ聞くとまるで悪いことには聞こえないな」
「うん、決して悪くはないんだよ。君は村にとっては限りなくいい若旦那として育ってるんだからね。でもだからこそ恋人としては薄情と言うか、気が利かなくて物足りなく映るんだよ。君は大局を見るのには向いているけどそれゆえに細かなものに気を配れない」
「つまりは?」
「大雑把すぎるってこと」
ここまで話して結局結論はそれかよ。きっぱりと言い切られた言葉にやるせなくなって机に伏せた。そんなのどうしようもないじゃないか。性格なんだから。
伏せたままそういうと、庄左ヱ門は俺の頭を静かに撫でた。
「まぁ、そういうわけでそういうことを踏まえた上で提案なんだけどさ」
「何だよ」
「いっそのこともう、僕と付き合わない?僕と君ならきっと上手くいくと思うよ。僕は君のそういうところも知ってて君を好きだしね」
多分、君となら世界の一つを壊すことだってできるんじゃないかな。何て、物騒なことを呟くと庄左ヱ門は俺から離れていつものように食えない顏で笑ってみせた。
だけどきっと庄左ヱ門は本気で言っているんだろう。
不覚にも、この卑怯な笑顔に心臓が跳ねた。












成長版庄団。
何か私の書く庄団は年々危険度が増してるなぁ。
まぁ、庄団コンビは公式で喧嘩で学級崩壊を起こせるからこれでいいと思ってますが。
だって、生活の基盤がほとんど学校生活にある忍たまで学校生活を壊すって世界の崩壊と同義じゃん。
そういう点では忍たま最強カプだよ。この子達








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