仮定の話






それは、爽やかな朝のことだった。
「ねえ、滝。三木って何で女の子に生まれなかったんだろうね」
「・・・喜八郎。朝起きて開口一番それとは、どんな夢を見た」
「えーと、確か三木が女の子で私と恋仲だったかな。」
「うん、聞いた私が愚かだった。起き抜けだから思考能力も低下してたな。黙ってくれ」
「いつもどうり滅茶苦茶可愛くて、綺麗だったよ。だけど着物の色が蘇芳だったのはいただけないよね。そりゃ三木は美人だから何を着ても似合うけど、色素が薄いからやっぱり淡い色のほうが似合うもの。桜色とか薄青とかだったらもっと可憐に違いないよね」
「知らん、見ていないものに同意を求められても困る」
「ああでも、瑠璃紺とか暗めの濃い青ならきっと映えるね、三木の髪は明るい金糸だから少し暗い色のほうが三木の魅力を引き出すに違いないよ。それこそ暗闇を照らし出す満月みたいにね」
「人の話を聞け。もはや男に使う形容詞が微塵も無いぞ喜八郎。いい加減気色の悪いこと言っていないで黙ってくれ」
「それで何か三木の家は親御さんが借金しててその返済のために金持ちのところに嫁がされそうになっていてね」
「ほう、それはまたいつもどおり倒錯的な夢だな。そして先ほどからの私の喋るなと言う意見は無視か。いい度胸だな貴様」
「でも僕としては納得いかないから、既成事実作っちゃおうとしたところでね」
「ああわかった、いいからもう本当に黙れ。お前の発言で清清しい朝をこれ以上穢すな」
「せっかくこれからだったのに起きちゃうなんて台無しだよね。女版三木なんて早々見られるものじゃないだろうにもったいなかったなぁ」
「台無しなのはお前の人格だ。そしてこれからとか言うな、朝っぱらからしたくもない余計な想像をしてしまうだろうが」
「それは滝がむっつりだからだよ」
「ほう、お前の出身地では同級生の気色悪い女装姿を友人の発言によって想像させられる可哀想な相手のことをむっつりというのか?」
「日本語ガタガタだよ?滝」
「間違いなくお前のせいだ喜八郎。そしてお前の人格のほうがよっぽどガタガタだ」
「でも、本当に三木が女だったら犯して孕ませてがっちり既成事実作ってでも嫁にもらうんだけどなぁ」
「そうか、そうか。せめて女のときくらい平穏に結ばれようとは思わないのかお前は」
「だって一番確実じゃないか」
「手段を選べ!犯罪と言うんだそういうのは!」
「ひと犯罪で三木が手に入るなら安いもんだよ?」
「当然のように言うなバカタレー!!」
「ところでもう一回寝直せば続きみられるかな?」
「私としては、共同で使っている部屋でそんな妄想まみれの夢を見て欲しくないがな」
「大丈夫。汚してもちゃんと後始末はしておくさ」
「だから!共同で使っている場所を汚すような真似をするなといってるんだろうがぁ!!」











「なぁ、三木あいつらまたすげえ話して・・・おい、その火縄銃・・・」
「うん、ちょっと動く的で練習してくる」
「ふ、ふーん」
まぁ、どうせ2,3発当たったところで死ぬような可愛げを持った奴らじゃないもんなと。三木ヱ門の同室者は何も見ず、聞かなかったことにし布団を畳み始めた。
その数秒後、4年生の忍たま長屋に銃声が轟いたのは言うまでもない。



































-------------------------------------------------------------------------------- 相変わらずのうちの綾部で綾部ファンの方すみません。
うちの綾部は常にこんなんです。
・・・いや、石田ならこういう綾部もありだと思うんだ。(思うな)


















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