気付く前から終わっていた恋だけど。
それでもお前といられるのなら。
友達面した笑顔の下で、僕は僕を殺し続けるよ。
目を閉じて耳をふさいで呟き一つ漏らさぬよう殺し続けるよ。
報われない恋と解っているけれど。
コロシ愛(ころしあい)
「で、結局計算やり直し」
「そりゃ、災難だったね。ところでそろそろ食堂に行こう?夕飯食べそびれる」
「あー、そうだな」
今日も決まってお前とあいつは、楽しそうに話をする。
うん、別に普通のことだな。分かっているさ、そのくらい。
でも、自覚しているか?
お前もあいつもさ、二人で話しているときが一番楽しそうに笑うんだ。
きっと気付いてないんだろうな。鈍いもんなお前ら。まあ、僕だってお前に惚れてなきゃきっと気付かなかったんだろうけどさ。
普段はあまり人を頼らないお前があいつだけは頼りにしていることや、あいつも自然とお前に背中を預けていることなんて。
お互い自分が誰を特別に見ているのかなんて全然自覚しちゃいないんだろう。
全くさっさと自覚してくっつくなりなんなりすればいいのに。
そうすりゃ僕だって諦めがつくのに。お前とあいつの間に割り込めやしないことくらい分かってるんだからさ。
いい加減、諦めさせてくれればいいのに。
「あ、兵太夫。お前夕飯食べたか?食べてないなら一緒に食堂行こうぜ」
お前はちっとも気付かず僕に笑いかけるから。
「おー、行く行く」
諦めることも出来ず友達面して笑うことしかできなくなるんだ。
この距離すらもなくしてしまうのが怖いから。
気付く前から終わっていた恋だから。
報われることのない恋だから。
友達面した笑顔の下で僕は僕を殺し続けるよ。
諦められる日が来るまで殺し続けるよ。
だからさ、一生お前も気付くなよ?
友達としてでいいから傍にいたいんだ。
了
うちの兵太夫は砂月の脳内にて着々と片恋担当になりつつあると言う話。
でもこれ、一番可哀想なのは兵太夫だけど一番悪いのも兵太夫って気がするですよ
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