幼き夢を現実にするため歩き出した日


入学前の話







「父ちゃんみたいな忍者になりたい」






それは幼い頃からの本気の願い。










1. 乱太郎








日差しの気持ちいい春の日のことだった。


「乱太郎、お前忍術学園に入らないか?」


田植えの休憩中、おにぎりを食べながら父ちゃんが尋ねてきた。


「ひんひゅひゅはふへん?」

「乱太郎、ちゃんと飲み込んでから話しなさい」

「んっく、忍術学園?」


ほら、と手渡されたお茶と一緒に口の中のものを飲み込み、もう一度反芻すると父ちゃんはこっくりと頷いた。
立派な忍者になるんだぞと語る時みたいに目がキラキラ輝いている。
そんな様子に何だか長くなりそうだなぁ、と思いながら父ちゃんを横目に私はおにぎりの残りに手をつける。


「その名の通り忍術の学校なんだがな、昔天才忍者と謳われた大川平次太秦殿が開いていて腕利きの忍者が教えて下さるんだそうだ。それでな・・・」


父ちゃんは構わず熱く語っている。何だか難しくて、脱線気味だ。
そしてやっぱりキラキラと輝いている。それは田植えで汗をかいたからじゃなくて、自分が忍者であることを父ちゃんが本当に誇りに思っているからだろう。多分。
そして、そう言う話をしているときの父ちゃんは何だか凄くかっこいいと思う。偶に恥ずかしいけど。
そんな父ちゃんが誇りにしている忍者になりたいと思う。本当に、心から。
だから二個目のおにぎりを食べながら尋ねてみる。


「腕利きの忍者の先生って父ちゃんより凄いの?」

「・・・まあ、そうだろうなぁ」


一瞬間をおきつつ父ちゃんが答える。何か悪いことを言ったのかな、と思ったけど経験上口にすると何となく叩かれそうな気がしたので黙っておく。かわりに


「そんな先生に習ったら私も一流の忍者になれるかなぁ」


と、聞いてみた。
父ちゃんは何だか満面の笑みを浮かべて嬉しそうになる。


「ああ、一流の先生の下で一生懸命勉強すればきっとなれるぞ。行きたいか?」


「うん!行きたい!父ちゃんみたいな忍者になりたい」


そう言うと、父ちゃんはいっそう嬉しそうな顔をして、ぐしゃぐしゃと私の赤い癖毛を撫でた。
私も嬉しくてにこり笑った。
それから、じゃあ入学費を稼ぐためにも去年以上に頑張らなきゃなと田植えを再開した。
























自分の中のは組設定を纏めるための入学前話連載開始。初めはやっぱり主人公なので乱太郎。
忍者の家系で乱太郎自身忍者になろうとしてる描写が書かれてるので設定考えるまでもないのかも なのだけどこういうきっかけってのもありだろうと書いてみた。
基本的にこのシリーズは、とことんこういった夢見がちに書いておこうと思う。



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