人間、後悔せずに生きるなんて器用なことは出来ないけれど。

「ねえ団蔵、君って一人っ子だよね?」
「そうだけど?今更何?」
「うん、これどうしたのかと思っ・・・」
「わぁぁぁぁぁ!」
こんなことなら普段から掃除しておくんだった、と思わずにはいられなかった。









女櫛








それがなんであるか理解したとたん、僕はひったくりよろしく庄左ヱ門の手からそれ――――――
朱塗りの女櫛―――――を取り上げて背中へ隠した。

「・・・団蔵」
「あはははは!どうかした?庄左ヱ門」
「お前がどうかした?だよ。何で隠すのさ、その女櫛」
「ナンノコトデショウ」

にっこり笑いつつ、ずりずりとあとずさってみる。
当然そんなことで庄左エ門は誤魔化されてはくれず、ずりずりとそれを追いかける。

「いや、たった今ひったくられたとはいえばっちり見た後だし片言になってて誤魔化すのはいくらなんでも無理だよ?」
「そこを何とか気にしないで欲しいんだけどなーなんて」
「ここまで派手に立ち回ってそんなこと言われても、かえって気になって仕方ないよ」
「やだなー、庄左ヱ門。荷物一つ一つを気にしてたら何時までたっても掃除終わらないんじゃないかな」
「うん、だから早く終わるようにとっとと説明して欲しいんだけどな」
「くぅ!ああ言えばこう言う!相変わらず羨ましいくらい回転の速い頭だなぁ!」

知ってたけど。
知ってたし、そういうところもすごいなぁって思うけどこういう時ばかりは憎らしいよ!庄左ヱ門!!

「何だよ、好きな子への贈り物とかなら別に恥ずかしいことじゃないだろう。相手を訊くほど僕は野暮天じゃないよ」
「そのくせ何でよりにもよって一番考えて欲しくなかった誤解を的確に考え付く辺り、わざとやってるのか天然なのかどっちだよ」
「何だか酷いこと言われてるなぁ。それで結局なんで女物の櫛が団蔵のところにあるの?」
「う゛〜、笑わないって約束できるか?」
「いや、内容によっては約束できない」
「そこは嘘でもしておこうよ!約束!」
「だってそれでもし笑っちゃったらお前怒るじゃないか」
「そう思うなら訊くなよ。じゃなけりゃ笑わない努力をしろよ!」
「だって気になるもの。まあ、できるだけ笑わないよう頑張るから教えてよ」

そうこう言っているうちに壁にぶつかっちゃったし。
庄左エ門は庄左ヱ門でばっちり、しっかり追い詰めてくれちゃってるから逃げ場ないし。

「う゛〜・・・」
「駄目?」

庄ちゃんにこんな顔(にっこり困ったような笑顔でお願い)されて、僕が勝てるわけ無いし。(そうさ、勝てないさ。惚れた弱みだこん畜生)
仕方なく僕は意を決して答えた。

「・・・僕のだから」
「・・・え?」
「〜〜〜!だから!僕のだからここにあるの!」

答えたのに


















「ちょっと!何で思いっきり引いてるんだよ!」
「・・・いや、だって団蔵って山田先生みたいな趣味があったことにびっくりして」
「違う!誤解!後ずさるな、失礼だ!」
「じゃあ、ちゃんと説明してよ」
「う゛〜〜清八に買ってもらったんだよ。小さい頃に」
「清八さん、そんな趣味があったんだ」
「それこそ誤解!濡れ衣もいいとこというか、さらに後ずさらないでよ!それにどんな変態だよ清八。じゃなくて、ちっちゃい頃お祭りでさ、女物だってわからなくて欲しがっちゃったんだよ、僕が」
「うわあ、何ていうか微笑ましいなぁ」
「うるさい!棒読みで言われても説得力ないやい!赤くて綺麗だなーって気に入っちゃったからさ、清八も清八で櫛には違いないから髪を結うのに不便はないだろうって買ってくれ・・・庄ちゃん、顏笑ってる」
「ごっごめ・・・だってかわい・・・ぶふっ駄目だその状況目に浮かぶ!清八さん昔っから団蔵のこと甘やかしてたんだ・・くくく」
「だー!笑うなよ!だから言いたくなかったんじゃないか!」
「ごめん、ごめん。怒らないでよ団蔵」
「ならそのにやけ面なんとかしろ!笑わないよう頑張るって言ったくせに!」
「あ、ごめん。それは無理。だって僕、最初本当に団蔵が誰か好きな娘(こ)にあげるんだと思ってたから」









ちょっと不安だったのにこういうオチだなんて、嬉しくて笑わずにいられなかったんだ。
なんて、庄ちゃんはにっこりと笑った。
くそう、天然めと思いつつ僕は赤面して黙るしかなかった。




































イリクさんに捧げる相互記念庄団小説。
いやもう、遅くなりまくった上こんなんですみません(本当にな)
イリク様に捧ぐ相互記念庄団SS 遅くなってすみません。 掃除中に見つけたのは〜ってリクなの
に掃除描写がほとんど無くてすみません。 そして庄左ヱ門が天然たらしですみません。(謝ってばっ
か) こんな奴ですがこれからもよろしくしてくお願いします。