真っ白な紙と、丁寧にすった墨を用意して、さあ何を書こう。

 

 

 

 

手紙

 

 

 

 


1、ナメクジ愛好家と鉄砲愛好家の場合

「僕はね〜。お父さんとお母さんと風魔にいるリリー婆ちゃん達にナメクジさん達のこと書くんだ〜」
ニコニコと一寸の曇りもない笑顔で真っ白な紙面にかかれたのは、予想通り彼の溺愛するナメクジさん達のことで
「喜三太、お前せめてその三分の一は自分のこと書いて あげなよ?」
じゃなきゃご両親が心配するぞと、組一番の鉄砲愛好家はため息混じりに注意した。
そんな彼の手紙が火縄銃の授業のことばかりなのはお約束。




2、炭屋の若旦那と染物屋の息子の場合
「僕は父さんと母さんと爺ちゃんに書こうかな」
硯で墨をすりながら、ぽつりと庄左エ門が呟いた。
「あれ?庄二郎ちゃんには何も書かないの?」
庄左エ門のことだから、自然と家族全員に書くのじゃないかなと思っていた伊助は何となく聞き返す。
「うん、流石に庄二郎にはまだ字なんて読めないもの。かわりにね。ほら」
「わあ、可愛いね。これ、庄ちゃんが作ったの?」
「うん。庄二郎のやつ虫とか好きだから喜ぶかなと思って」
 開かれた掌には、銀杏とドングリを細工して作ったと思われる蝶を象った可愛らしい玩具。




 

3、未来の一流忍者と剣豪とどケチの場合
「私は父ちゃんと母ちゃんに立派な忍者になりますって書こう」
「乱太郎はいつもそれだな」
相変わらずのくだりを入れる友人にけらけらと金吾が笑って茶々を入れる。
「じゃあ金吾はどうなのさ?」
「僕は鎌倉にいる父上に強い剣豪になりますって書くよ」
「何だ、金吾だって乱太郎と目くそ鼻くそじゃんか」
「きりちゃんは土井先生に書くの?」
「おう、次の休みもアルバイトの手伝いお願いしますってな」
「それってわざわざ手紙に書くことなのか?」
「解ってないな〜金吾。普段わざわざやらないことだからこそ効果あるんだよ」
「はぁ?何だよそれ」
「つまりな、俺はどケチだろう?だから普段言っちゃえばすむことをわざわざ手紙なんてもったいないまねしないだろ?」
「なるほど、普段やらない分土井先生きっと喜ぶよね」
「そ、だからこれは次の休みの時のための先行投資ってやつさ」
そういうと組一番のどケチは八重歯を見せて笑った。
それだけじゃないくせに素直に言わない彼の笑顔はすごく嬉しそうだった。





4、食いしん坊な商人の子とニコニコ笑顔の山伏の子の場合
「僕はパパとカメ子に出すんだ〜」
「あ、じゃあうらうら山で拾った紅葉も入れない?すっごく綺麗だからカメちゃん喜ぶんじゃない?」
「ホントだ。凄くキレ〜」
「でしょう?いっぱい拾ったから好きなのあげるよ」
「うん、三治郎有り難う」
パパとカメ子へ。
元気ですか、僕は元気です。
忍者の修行は大変で、失敗ばかりしてるけどいっぱい友達がいるから楽しいよ。
今日はね・・・

三治郎がくれたもみじを前にし僕はいつもどおりの手紙の出だしを書き始めた。


しんべヱは無意識に友達のことを褒めてたり、家族に伝えるイメージがあります。(ここで言っても)
拍手有難うございました

 

 

5、からくり小僧と馬借の若旦那の場合

「団蔵は誰に書くんだ?」
「ん〜僕は父ちゃんと母ちゃんと清八と村の人たち用」
「え、お前字ぃ汚いのにそんなに出すのかよ」
「む、何だよ。僕がそんなに書いちゃ悪いのかよ」
「いや、別に悪くはないけど読めるのか?」
「大丈夫だよ!清八が解読するから!」
「・・・暗号かよ」
「そう言う兵太夫は誰に書くんだよ」
「僕?僕はもう出来たよ」
「え?何て書いたんだ?」
「書いたというか、作った」
「へ?」
「こんな風にね」
そう言って差し出されたのは見事なは組み面々を象った紙細工。
「うわ〜、すごいそっくりじゃん。流石兵太夫!からくり小僧。お〜い、皆見てみろよ」
そう言ってはしゃぐ団蔵に照れ笑いを向けながら、兵太夫はそっと『大事な友達だよ』と一言添えた手紙を隠した。


 

 

 

 

拍手においていたは組のよい子達話。
みんな良い子たちだから空いている時間にはご両親に手紙書いたりしてるんだろうなぁと。
一部暗号のような子もいるけど(笑)

 

 

 

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