お前が無事でよかった。
お前の村が無事でよかった。
お前が何も失わなくて良かった。
あの日俺が失った多くのものを、お前も失わずにすんでよかった。
そりゃあ、羨ましくないなんて嘘だけど。
せっかく出来た友達をなくすなんて、もったいなくて仕方ないだろう?
なくすなんて言葉はどケチには体に毒なんだ。
3, 凍血(とうけつ)
お前の村が戦だって聞いて驚くと同時に怖かった。
お前の村も焼かれたらどうしようとか、お前の両親も死んじまったらどうしようとか、お前が死んだらどうしようとか。
そういうことばっか頭ん中巡って、なのに体は凍ったみたいに動けなかった。
手足はもちろん指一本、呼吸をすることさえ忘れたように、俺はあの時動けなかった。
それこそ血から凍ったみたいに。
この体を巡る血が全部凍っちまったみたいに。
俺は怖くて仕方なくて、うごけなかったんだ。
でもさ、皆があのときお前を助けに行こうっていったから。
何のためらいもなく言ってくれたからさ。
俺はお前があんな悲しい目にあうなんて嫌だって思えたんだ。
だからさ。
「あの時は有難うな」
そんな風に笑う義理なんかないんだぜ?
お前が無事でよかった。
お前の村が無事でよかった。
お前が何も失わなくて良かった。
あのときのお前は昔の俺自身だったから。
助けられて救われたのは俺自身なんだ。
お前は知らないだろうけど。
了
お題関係ねえなおい。という感じのきり団話。・・・きり団?
きりちゃんは14巻で団蔵を助けたことで、色々失わざるを得なかった無力な自分を救っているといいよという話。
きり団はカプとしては推奨していませんが片や戦で色々なものを失った子、片や戦で色々なものを失うとこだった子なので対比しやすくネタも作りやすいです。
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