この小説は所謂死にネタで登場人物が相手を殺しちゃったりしています。
そういうのが苦手だったり落乱の登場人物が殺し合いなんて赦せない方はこのままスクロール
せず何も見なかったことにしてさくっとお帰りになることをお勧めします。






 


いいんですね?






 








 








 


熟れ切った果実は落ちるしかない。
あの日選んだお互いの手を僕らが離さなきゃいけないように。






 








 


熟れた罪





 








 


皮膚の上から脈打つ血管を、首を守る筋の感触を確かめるようにそっと触れた。
びくり、団蔵の体が僕の手から逃げるように軽く跳ねる。
どくん、どくん。
薄い皮膚越しにふれる脈。
ゆっくりと誘われるように指を絡める。


「あ・・・」

本能的に身をよじって体が逃げる。
それを押さえつけるように腹を蹴って、怯んだところを地べたに押さえつけなおす。

「しょ・・・庄ざ・・・」

咳き込み荒くなった息で呼ばれる名前。
どうして?と問いただす眸。
僕がこんなことをするなんて信じられないとでも言うような。
僕がこんなことをするなんて信じたくないとでも言いたげな眼。
だけど僕は残念ながら本当に僕で。
いっそ、偽者だよとでも言って欲しかったのだろうけど。

「うん」

肯定を、する。
彼に見せ続けてきた僕の笑顔で。
彼が好きだと言ってくれた僕の笑顔で。
びくり。
本能的な恐怖に団蔵の体が怯えたように、かすかに震えた。


「・・・ごめんね」

それが彼にかけた最後の言葉。
言い終えると同時、僕は団蔵の頚動脈を一気に締める。
見開かれた目、声の無い悲鳴。
何かを掴もうとするように、団蔵の腕が伸ばされて。
何かを求めるようにぴんと伸びた手は何も掴むことなく、操り人形の張り詰められた糸が切れるように地面に落ちた。

「・・・団蔵?」

もう、名前を呼んでもぴくりとも動かない。

「団蔵?団蔵?」

温かかった身体は、ゆるゆると体温を失って。

「団蔵!団蔵!!団蔵!!!団・・・っ!!!」

もう、戻ることなどない。
完全な終わり。
これ以上ない、完璧な終わり。
他でもない僕のこの手で施した終焉。
僕は、今更ながらそれを漸く理解し。
通り雨のように突然の罪悪感と、どうしようもない終焉に涙して。

「・・・ふっ」

それに負けず劣らず訪れた、どうしようもない歓びと可笑しさに。

「ふっ・・・ふはっ・・・ははは・・・あはは、あはははっ、あはっあははははははは」

声を立てて思いっきり笑った。






 








 








 








 


悲しかった。

もう二度と、大好きだった笑顔を見られなくなることが。

おぞましかった。

何より大切と思っていた君を殺せてしまう自分が。

怖かった。

繋いでいた手が離れて、いつか他の人の手を取ることが。

嬉しかった。

これで君が決して誰のものにもなったりしないことが。

幸せだった。

他の何者に奪われることなく、僕が君を奪い尽くせたことが。

何も生み出せず、何も残せない、終わるしかない僕らが。

 

 


『僕ら』として終われる事が。

 

 

僕は心から嬉しくて、悲しかった。






 








 


「大好きだよ、団蔵」






 








 


嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
それと同じくらい、悲しくて、悲しくて、悲しくて、悲しくて。
僕は歓喜で狂ったように。
自分自身を嘲笑うように。
寂しさを誤魔化すように。
世界一の幸せ者のように。

 

 

 



笑って。
笑って。笑って。
笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。 笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。笑って。 笑って。笑って。笑って。―――――――泣いて。
泣いて。泣いて。泣いて。僕は。

 

 

 

 


大好きな、大切だった彼の側で、自分の首を掻っ切った。
勢いよく、あふれ出した鮮血は僕らを地面に落ちた柘榴のように染めて僕は意識を手放した。
そうして、僕らの熟れ切った罪は地に落ちた。
この手を選んだあの日から決まっていた結果だった。






 








 








 








 


あままなさんに砂月の萌えポイント「首絞め」イラストを(無理やり)描かせた結果できた話。
心中はしたいとは思わないけど男同士の恋愛を完了させる手段の一つではあると思う。
やられたほうはたまったもんじゃないけど。 イラストの方は(ちょくに飛べるようにすると本人に怒られそうなので)下のURLをぺしっとはっつけてください。
http://kaosuzenya.client.jp/kubisime.htm





 


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